「氷洞」


 廊下で白銀が声をかけてくるのは珍しかった。余所行きの白銀を見ると思わず笑いだしてしまいたくなるのは、きっと私だけじゃないはずだ。


「何」

「お前、幹部やる気ある?」

「……なんで私が?」


 ここで普段の白銀なら「だからさぁ! そういう冷たいリアクションとんないでよ!?」なんて叫ぶところだが、廊下ではそうはいかない。居心地悪そうに髪を触りながら「や……まぁ、ほら、雪斗も言ってただろ、気心知れてる相手選ぶのがいいって」と答えた。どうやら白銀にとって私は気心が知れているらしい。


「因みに、結局何人幹部選ぶの?」

「四人。だからナンバー7まで選ぶことにしたんだけど」


 つまり白銀を入れて七人が幹部になるということか。


「仲が良いって前提で、先輩に一人いてほしいからうーちゃん先輩にナンバー3を頼んだ。羽村はメンバーの扱い上手いからナンバー4、西崎はルールとか意外としっかり守って模範的な感じになってくれるからナンバー5」


 白銀は妙な順序で幹部を数えながら指を折る。


「一年の中だとそこそこみんなと仲良くて幹部にしても角が立たないヤツってことで花岡がナンバー7。だから氷洞にはナンバー6を頼みたいなって」