「幹部って信用できなきゃいけないだろ。例えばめちゃくちゃ強い一年がいたとして、俺にもタイマン勝ったとする。でもだからって、ソイツにナンバー2任せるのって不安じゃん。哲久からすれば性格とか付き合い方とかなんにも分かんないヤツだし」

「……まぁ確かにな」

「だからお前が気ごころ知れてるヤツを据えるのがいいと思うぜ? 他にも、色々考えるところはあるけど」


 幹部は何人にするか。実力主義とはいえ、どうしても卒業を迎える以上、譲位も視野に入れて一年幹部を選んでおくべきか。三年も幹部に入れるべきか。考えることは意外と色々ある、と雪は指折り提案した。白銀は眉間の皺を深くする。


「……今日の明日じゃ結論は出なさそうだな。主要メンツってなんとなくなってるヤツの意見も聞くか?」

「まぁそれはありだな。逆に意見まとまらなくなる気もするけど」

「とにかく、幹部が決まってくれるのはありがたいよ。溜まり場も、哲久か雪斗が降りてきたとき以外はぐちゃぐちゃしてるし」


 とりあえず俺は莉乃ちゃんの様子見てくる、と羽村は立ち上がった。随分ご執心だけれど、あの子を野放しにせずに済むのはありがたいといえばありがたい。了解、と二人が頷けば羽村は出て行った。

 そして、ここでいつもの白銀ならごろんとソファに寝転がって「あー言いすぎちゃったなー」と言い始める。……はずなのだが、白銀が眉間の皺をとく気配はない。


「……白銀?」

「ん? なんかいい意見ある?」

「いや、そうじゃないんだけど……」


 顔を上げてこちらを見ても変わらない。一体どうしたのか。


「さっきの……莉乃ちゃんに言い過ぎたって気にしてるかと思って」

「えぇ、気にしてねーよ。あれはよくねーだろ、普通に」


 腕を組んでいた白銀は、こめかみに親指を当て、額を押さえるような姿勢をとる。きょとんと私が見つめ返しても、「当たり前じゃねーか」と続ける。