「おい、氷洞」
本部に入ってきた羽村は、白銀もいるというのに、なぜか私に声をかけた。
羽村績、本部に入ってくる数少ない主要メンツの一人。幹部制があればナンバー3を名乗ってるだろう。名前の響きは中性的だけど、見た目も性格もばっちり男だ。身長は一七〇センチ弱とやや低めだけれど、体つきはガッチリとした筋肉質。安っぽい金色の髪はいつも短く、ザ・体育会系。真っ赤なTシャツの上に羽織っている白シャツは皺だらけで、脱ぐたびに丸めているのがよく分かる。
「なに?」
「いまの青龍って女オッケーだよな?」
ドッカリと羽村はソファに腰を下ろした。これまたなぜ白銀ではなく私に訊くのだろう。
「オッケーなのは私がいる通りだけど……なんで? 決めるのは白銀だから白銀に訊けば……」
白銀もそこにいるわけだし、と向かい側のソファに座る白銀を示す。白銀はマグカップ片手に固まり、無表情で羽村を見つめている。傍目にクールに見えるその内心、多分“きょとん”だ。
「いやぁ、その、哲久に訊いても良かったんだけどさ。つかこういうのをリーダーに訊くべきとは分かってんだけどさ……」
羽村は気まずそうに白銀をチラチラと見る。なんだなんだと眉を顰めていると、羽村はこそっと私に耳打ちした。
「……お前、雪斗と付き合ってないんだよな?」
「付き合ってないけど」
いい加減その手の話は聞き飽きたし、わざわざ白銀の前で隠すものでもないので即答した。羽村も、付き合ってないとなれば特に問題はなかったらしく「そうかぁー」と安心したように大袈裟なリアクションをとる。
本部に入ってきた羽村は、白銀もいるというのに、なぜか私に声をかけた。
羽村績、本部に入ってくる数少ない主要メンツの一人。幹部制があればナンバー3を名乗ってるだろう。名前の響きは中性的だけど、見た目も性格もばっちり男だ。身長は一七〇センチ弱とやや低めだけれど、体つきはガッチリとした筋肉質。安っぽい金色の髪はいつも短く、ザ・体育会系。真っ赤なTシャツの上に羽織っている白シャツは皺だらけで、脱ぐたびに丸めているのがよく分かる。
「なに?」
「いまの青龍って女オッケーだよな?」
ドッカリと羽村はソファに腰を下ろした。これまたなぜ白銀ではなく私に訊くのだろう。
「オッケーなのは私がいる通りだけど……なんで? 決めるのは白銀だから白銀に訊けば……」
白銀もそこにいるわけだし、と向かい側のソファに座る白銀を示す。白銀はマグカップ片手に固まり、無表情で羽村を見つめている。傍目にクールに見えるその内心、多分“きょとん”だ。
「いやぁ、その、哲久に訊いても良かったんだけどさ。つかこういうのをリーダーに訊くべきとは分かってんだけどさ……」
羽村は気まずそうに白銀をチラチラと見る。なんだなんだと眉を顰めていると、羽村はこそっと私に耳打ちした。
「……お前、雪斗と付き合ってないんだよな?」
「付き合ってないけど」
いい加減その手の話は聞き飽きたし、わざわざ白銀の前で隠すものでもないので即答した。羽村も、付き合ってないとなれば特に問題はなかったらしく「そうかぁー」と安心したように大袈裟なリアクションをとる。