「そういいつつ、俺は白鴉の女と踏んでるけど」

「ちげーよ」


 白銀が食い気味に否定した。雪がぷっと笑う。


「……まさかお前の」

「それも違うっての。青龍のメンツに女子がいることは許してるけどな、メンツ同士の恋愛は禁止なんだよ、厄介事になりがちだから」


 青龍のメンバーに女子が許されるようになったのは桐椰先輩が青龍に就任した後、ただしその桐椰先輩の意見で恋愛は禁止。あんなに適当なくせに締めるところは締めるんだから。

 ふぅん、と声になっているかいないか微妙な返事をし、冬樹は白銀をじろじろと見た。白銀は訝し気に眉を顰めていたけれど、ややあって、冬樹はかぶりを振って腕を組むのもやめる。


「……なんだよ」

「いや。今日来たのは新任の挨拶だけだ。今ここでやり合うつもりはない」

「挨拶ってマジで“こんにちは”だけかよ。お前ら本当真面目だな」


 女装しかしてない西か祭りしかやってない南と足して二で割れよ、と雪が皮肉を込めるが、冬樹は無視。代わりに一人だけこちらに歩み寄って来た。

 そう、こちらに。なぜか白銀じゃなくて私の前だ。一体何事だ、と目を点にしていると、コホン、と玄武が咳払いした。


「その……、氷洞さん」

「……何ですか」


 前回会ったときに失礼なことでもしただろうか。何か気に食わないことでも言ってしまっただろうか。そんな鬱憤を溜めて会いに来るような人には見えないし玄武は代々真面目だけれど、いやまさか──。


「好きです」


 ──その懸念が全て、吹っ飛んだ。


「俺と付き合ってください!」


 毎年四月の恒例行事の一つ、代替わりした玄武の挨拶。

 ただしその挨拶は、頭を下げて手を差し出して告白するなんて、異例なものとなった。