白銀の皮肉交じりの指摘に、玄武の頬は引きつった。白銀は私達に置いて行かれて拗ねてたのだろう、ここぞとばかりに続ける。


「つか喧嘩のたびに模試の成績表持ってくるってどんだけだよ。ダサすぎだろ。喧嘩で勝てないって言ったようなもんじゃねーか」

「……黙れ」

「でもって彼方先輩には負けてたからなぁ。今年はどうだ? 雪斗に勝ててんのか?」

「黙れって言ってるだろ! 中途半端に進学校気取ってるせいでうちはお前らと違って課題が多くて自学に手が回らないんだ!」


 眉を吊り上げて目を見開いてなされる激しい抗議。その切実な訴えは私達ではなく先生にすればいいのでは、なんて白い目を向けたのは私だけじゃないだろう。


「大体、いま雪斗って言ったな? お前じゃないんだな! お前じゃ勝てないんだなぁ!」

「は!? うるせーようちは雪斗が一番だから安牌に雪斗の名前出しただけなんだよ! 俺だって別に成績悪かねーし! なぁ氷洞!」

「でも……私より成績悪いよね……」

「うるせーよお前が校内五位なのが悪いんだよ! 俺だって十位以内から外れたことねーよ!」


 白銀の必死の弁解。雪が「え、うちの高校なんてただでさえ馬鹿なんだから一位以外全員クソだろ?」なんて言って私の成績表を鼻で笑ったことは黙っておこう。その点について玄武がどう思っているのかは知らないが、玄武は目を細めた。


「五位……」

「それはこっちの氷洞の話だからな?」


 なぜそちらに反応したのだろう、白銀がくいっと私を親指で示して訂正するが、玄武は「分かってるそんなことは」と顔をしかめた。私の成績に反応したとなれば猶更疑問だ。


「で、氷洞、ここで何してんだ」

「あ、雪を待ってた」

「アイツ氷洞置いてどこ行ってんだよ……」

「ちょっと待って、連絡あった」


 LIMEを開くと「事情はなんとなく分かったから帰る」というメッセージが五分ほど前に届いていた。もうすぐここにも来るだろう。白銀に目配せすると、「んじゃ敷地内にいる理由はねーな」と呟いて裏門の扉を開ける。どうやら内側からしか開かない仕組みらしい。この二人がわざわざ上から降って来た理由が分かった。


「じゃーな、玄武」

「いやいや待て待て! お前らこのまま帰る気か!」

「当たり前だろ、今日は新米玄武くんが何してるか見に来ただけだし」