「……で、青龍のメンバーだっていうアンタは」

「いやだから私は玄武の様子を聞きに」

「そうじゃなくて! 何をしに来たかはもう聞いたから!」


 玄武は腕を組んでそわそわしたままだ。これに近い仕草はよく見る。紅茶を淹れてほしいのに後輩の前で私に頼むこともできず察してほしいときの白銀だ。

 が、一体何を察しろというのか。青龍の様子でも語れと言われても、何も話せることはないし、白銀の本当の姿は企業秘密みたいなものだ。困ったな、と私も腕でも組んで考え込みたくなってきた、そのとき。


「氷洞!」


 また、上から声がした。今日はよく上から人が降ってくる日だ、と少し上を見上げると、私と玄武の間に見事、長ランを着た白銀が着地した。相変わらずダサイ長ランだ。


「……何してるの白銀」

「何って、お前らに連絡しても返事しないから心配で見に来たんだよ」

「……あぁごめん、ただの雑談だと思って既読つけなかった」

「っ……!」


 いつもなら「ひょおどおおぉぉ」と嘆いたのだろうけれど、他校生の前ではそうはいかない。白銀は顔をひきつらせるに留めた。

 一方玄武は、突如降って湧いた白銀に目を点にしていた。が、長ランを着ていることを目で確認しただけで誰なのか理解したらしい。人懐こそうな丸い目がスゥ、と細くなった。


「お前が百一代目か」

「……お前、玄武のメンバーか?」


 白銀の目も、玄武を品定めでもするように見る。私との間に入ったせいで、二人は至近距離で対峙し、睨み合う。


「あぁ。挨拶が遅れたな、五十七代目の玄武だ」

「お前がいつまでも挨拶に来ない腰抜けか」

「腰抜けじゃねーよ、こっちには事情があんだよ。西高とどんぐりの背比べしてる東高と違って、北高は学力トップを伝統的に保持してるからな」

「へーぇ。うちの百代目と喧嘩のたびに模試の成績表持ってきては敵わずに破り捨ててた五十六代目は元気にがり勉やってるか?」


 そう、市内で一番偏差値の高いということは北高の生徒が本来一番偏差値が高いはずなのに、あんな桐椰先輩のほうが北高のトップより偏差値が高い。それに加えて「(成績も中途半端だし)なんでお前ら不良なんてやってんの?」なんて言ってしまった日には、最悪だ。桐椰先輩のせいで、女性関係も相俟って、北高と東高の仲は非常に険悪である。