無事裏門に辿り着いてスマホを確認すると、雪から「ちょっとクラストまで行ってくる」なんて敵の本拠地に乗り込む宣言がされていた。少し心配だけど、北高なら大丈夫だろう……。表と同じく真っ黒に塗られた門に寄りかかり、他に来ているメールを簡単に確認して──。
「うぉっ!?」
「えっ!?」
その時、突然背後から聞こえた叫び声に驚いて声を上げ、振り返る──いや、顔を上げた。声がしたのは頭上からだった。
いたのは、焦げ茶色の髪をした男子。制服は北高の学ラン。目が大きくて童顔で、多分背もあまり高くない。彼がいるのは、校門の柱の上だ。
「…………」
「…………」
暫くお互い無言だった。なぜ北高生が自分の高校に忍び込むような真似を……。もしかして雪みたいに制服だけ借りてる他校生? しかしそれなら木も何も植えられてない裏門付近で柱の上なんて目立つ場所から入るわけが……。
一体どういうことなんだ、と見つめ続けるも、その男子の目は泳ぐ。なんと言葉を発すればいいか困っているようだ。でも私はどう見ても部外者なんだし、私からは彼が他校生かどうかは分からないのだから、北高生でもそうでなくても、北高生として堂々と問い質せばいいのでは……。
「お、前!」
漸く口が開かれたかと思えば、その声には戸惑いが目一杯現れていた。北高生じゃないのかこの人。
「東高ですよね!? なにしに来たんですか? 一人ですか?」
しかも敬語で、柱の上からだ。早く降りてくればいいのに。
「……一人ですけど、あなた誰」
「あー、あー、そう、一人か……一人ね……」
私の質問に答えることなく、その人は私が一人であることを復唱する。うんうん、と顎に手をあてて暫く考え込んでいたかと思うと、ハッと何かに気が付いたような顔をして──柱から飛び降りた。降りるのを忘れていたらしい。
「…………」
「あぁ、そうか、自己紹介でしたね」
自己紹介なんて大したものを求めたつもりはなかったのだけれど、ごほん、と咳払いをして、彼は私に向き直る。並ぶと、思った通り背は高くなかった。私より目線が少し上程度なので、多分一六五センチ程度だろう。まだ高い声と、童顔なのも相俟ってか幼く見える。しかし一年生にしては制服の真新しさがない。
「うぉっ!?」
「えっ!?」
その時、突然背後から聞こえた叫び声に驚いて声を上げ、振り返る──いや、顔を上げた。声がしたのは頭上からだった。
いたのは、焦げ茶色の髪をした男子。制服は北高の学ラン。目が大きくて童顔で、多分背もあまり高くない。彼がいるのは、校門の柱の上だ。
「…………」
「…………」
暫くお互い無言だった。なぜ北高生が自分の高校に忍び込むような真似を……。もしかして雪みたいに制服だけ借りてる他校生? しかしそれなら木も何も植えられてない裏門付近で柱の上なんて目立つ場所から入るわけが……。
一体どういうことなんだ、と見つめ続けるも、その男子の目は泳ぐ。なんと言葉を発すればいいか困っているようだ。でも私はどう見ても部外者なんだし、私からは彼が他校生かどうかは分からないのだから、北高生でもそうでなくても、北高生として堂々と問い質せばいいのでは……。
「お、前!」
漸く口が開かれたかと思えば、その声には戸惑いが目一杯現れていた。北高生じゃないのかこの人。
「東高ですよね!? なにしに来たんですか? 一人ですか?」
しかも敬語で、柱の上からだ。早く降りてくればいいのに。
「……一人ですけど、あなた誰」
「あー、あー、そう、一人か……一人ね……」
私の質問に答えることなく、その人は私が一人であることを復唱する。うんうん、と顎に手をあてて暫く考え込んでいたかと思うと、ハッと何かに気が付いたような顔をして──柱から飛び降りた。降りるのを忘れていたらしい。
「…………」
「あぁ、そうか、自己紹介でしたね」
自己紹介なんて大したものを求めたつもりはなかったのだけれど、ごほん、と咳払いをして、彼は私に向き直る。並ぶと、思った通り背は高くなかった。私より目線が少し上程度なので、多分一六五センチ程度だろう。まだ高い声と、童顔なのも相俟ってか幼く見える。しかし一年生にしては制服の真新しさがない。