「桐椰先輩、お久しぶりです」

「お、雪斗! 風邪は?」

「治りました」

「京花ちゃんの看病のお陰で?」

「関係ないけど看病はしてもらいましたね」

「いいなー、相変わらずラブラブだなー」

「ねぇだからちょっと待って!」


 そして再び白銀が勢いよく顔を上げる。でも桐椰先輩がソファに座りたがったのでいそいそと端に寄る。


「なんでラブラブ否定しないの!? やっぱり付き合ってんの!?」

「いや否定する前にお前が食い気味で反応したんだろ」

「雪斗その顔やめろ。余裕のその顔がムカつく」

「元からこういう顔だから」

「つーかいいから答えろ。氷洞と付き合ってるのか否か。ナンバーワンからの命令だ」

「付き合ってない」

「だったらなぜラブラブを否定しない!」

「だから否定する前にお前が食い気味で反応したんだろって」

「じゃあ改めて聞くけどお前氷洞とラブラブなの?」

「どうでもいいけどラブラブとかくそ寒い台詞連呼するのやめて気持ち悪い」

「それ俺が気持ち悪いって言ってる!? やめてね傷付くから!」


 黙って聞いていても癪で遂に口を挟んでしまった。そこですかさず反応してショックを受けてしまうのが白銀のチョロイところだ。ソファの上で膝を抱えて顔を隠してしまっている。隣の桐椰先輩はにやにやと愉しそうに遣り取りを観察している。


「でも実際、京花ちゃんと雪斗は仲良いよね。いいなー、幼馴染とか男の夢だわー」

「どっちか言うと女の子の夢ですよ。彼方先輩って幼馴染いないんですか?」

「いるいる。いるけど男。すげーカッコイイ男」

「彼方先輩とどっちが?」

「んー、俺はアイツのほうがカッコイイと思うかなー。だって女子は大体みんな同じ顔に見えるとか言ってるくせに、ちゃっかり初恋の相手を彼女にしてんだよ? それでその子と一途に付き合ってもう何年ってヤツだよ? すごくない?」

「桐椰先輩はそれを見習おうと思わなかったんですか?」

「えー、ムリムリ。俺アイツと違って女の子みんな好きだからさー、みんな違ってみんな可愛いって思っちゃうからー」


 あはははは、と軽く笑ってみせる桐椰先輩、クズ発言。それなのに明るく笑ってるせいでクズ発言なのかなんなのか分からなくなってしまう。本当にイケメンは何をやっても言っても責められずに得だな、とその顔を見ながらしみじみ思ってしまった。いや、その歴代の彼女から度々責められてはいるけれど。