桐椰先輩は、色々とスペックの揃ったイケメンだ。だがしかし、致命的な欠点は“女好き”。しかも女癖が悪いわけじゃないから余計に(たち)が悪い。ただただ女の子が大好きで、女の子なら誰でも可愛くて、女の子ならそれだけで優しくしてしまう。善意も悪意もなく、ただ女の子というカテゴリーの中で博愛主義を貫いているだけ。だから来るもの拒まず、去る者の台詞はいつも「アタシとあの子どっちが大事なの!?」。因みに桐椰先輩の返事はいつも「どっちも大事」。フラれて当然だ。


「彼方先輩……聞いてくださいよ、氷洞が今日も俺に冷たくて」

「京花ちゃんは毒舌なのが可愛いところだから」

「なんで先輩の中ではなんでもかんでも可愛い変換されるの!? 俺と氷洞とどっちが可愛いんですか!?」

「え、京花ちゃん」

「ひょおどおぉぉ!」

「私に文句を言うな」


 因みに桐椰先輩は白銀の素を知っている。弟分として白銀のことを可愛がる桐椰先輩の前では白銀がクールさを貫けなかったせいだ。そしてどんなに可愛がろうと男は男として女子ほど可愛いと言えない桐椰先輩、残酷だ。


「雪斗は?」

「最近風邪引いて引きこもってて。明日には来ると思いますよ、もう治ったみたいですし、元気そうでしたし」

「え、ちょっと待って」

「え? お前が紅茶淹れるタイミング指図するとか千年早いんだけど」

「紅茶じゃなくて! 雪斗の話!」


 急にストップをかける白銀に怪訝な目を向けると、白銀の顔は裏切られたかのように愕然としていた。


「なんで氷洞が雪斗の様子知ってんの!?」

「いや、見たし」

「どこで!?」

「雪の家。病人なんだから家で寝てるに決まってるじゃん」

「その『馬鹿なの?』みたいな目やめて!? だって俺が風邪引いて寝込んでも氷洞は見舞いに来てくれなかったじゃん!?」

「だって雪と白銀は違うじゃん」

「彼方先輩! 聞きました今の!?」


 桐椰先輩は紅茶の入ったマグカップを受け取りながら「うーん」と首を傾げる。