最初に話したのは、その時だった。一生懸命ゴミを捨てる私を、その牛乳瓶の底みたいなレンズの奥の黒い目を丸くして、暫く立ち尽くして、その後、私の手からゴミを受け取って、代わりに捨ててくれた。下駄箱を一緒に掃除してくれた。ちょっと薄汚れたローファーを、保健室の先生に言ってタオルを貰ってくれて、磨いてくれた。
「大丈夫だよ、誰にも言わないから」
私が何か言う前に、察してそう答えてくれた。
「どうしてだろうね。……きっと、フラれたことが悲しくて、いっぱいいっぱいになってたんだよ。大丈夫だよ、有島さんは悪くないよ」
あ、この声、好きだなぁ、と、その時にも、思った。