その感情の正体は今でも知らない。感覚的に言えば、「あれ、二十三歳の教師ってこんな感じ?」「私、まだなにも分からない、っていうか上手くできないんだけど」「でも生徒から先生、先生、って言われるんだけど、どうしよう」なんてたどたどしい感情ばかりが連なっている。
自分が思っていたよりも、二十三歳というのは十八歳から見ると酷く大人びていて、二十三歳の教師というものは十八歳の高校生と大差ないと思ってしまえるほどに幼かった。
『……だからね、きっと、有島さんが二十三歳に──僕と同い年になる頃には、きっと、僕だってそんなに格好いい大人じゃなかったって気が付くよ』
だから、なのだろうか。生駒先生は、やっぱり私にとって格好いい大人だったと──私の告白を断ってくれた格好いい先生だったと、今でもそう思う。