「……そうだね」

「そういう意味ではいい人だったのかもね、生駒先生」

「……うん。そういう意味で、いい人だったと思う」


 別に、教師と女子高生が付き合って悪いなんて、私は今でも思わない。でも、なんとなく、あの時、生駒先生と付き合ってたら……、今の自分は、あの時の自分を止めている気がする。


「……だから、私の男を見る目は確かだったってことなんだけどね」

「まぁ、今いい彼氏いるわけだしね」

「それは別に関係ないわけですけども。いや関係もあるけども」


 今ならなんとなく、生駒先生が私の告白を断ったときの理由が分かる気がする。


 卒業して半年もたたない内に、十九歳になっただけなのに、高校生から大学生になっただけなのに、一人暮らしを始めただけなのに、見える景色はずっと変わった。高校生とほとんど変わらない気持ちでいるのに、街中で高校生を見かけるとすごく幼く見えるようになった。

 教職の授業をとり始めて、これから自分が生駒先生みたいに教師になるんだと思うと、急に生駒先生が──いい意味ではなく──近くなった気がした。


 そして、現に教師になって、自分があの時の生駒先生と同じなんだと思うと、唐突に、奇妙な感情に襲われている。