「つきあ……え?」

「生駒先生のことが好きです」

「え、いや……え?」

「もう来月には卒業するから付き合ってください!」

「え、いや、ちょっと……ちょっと、待って、落ち着いて」


 言いながら、生駒先生は黒縁眼鏡を押し上げて、ガタガタと後ずさり、備品の椅子をひっくり返した。一緒に自分も「わっ」と声を上げて腰をぶつけて、「いたたたた……」と患部を摩っている。


「えーっと……有島さん……」

「ずっと好きでした」

「いや、あのね、落ち着いて」

「落ち着いてます」

「いやいや、だからね」


 先生こそ落ち着きなくそわそわと机の上を片付け始める。今そんなことしなくていいはずなのに、まるで私の告白をなかったことにしようとするかのように、そんな作業に勤しもうとする。


「先生」

「……あのね、有島さん」


 私の催促に、生駒先生は手を出してストップをかけた。のろのろと椅子に座りこみ、「ちょっと待ってね」と額を押香菜る。困っているように、迷惑であるように、見えた。