会話が止まった。なんで、私は、生駒先生にはこんな風にしか返事ができないんだろう。倉中くんみたいにどうでもいい人には返事ができるのに。因みに、倉中くんは、生物教室の外から友達に呼ばれて帰った。何の理由で呼ばれたのかは忘れた。


「受験までなんて、あっという間だからね。頑張ってね」


 そう。あっという間だ。あっという間に、私は、卒業する。


 どうして、生駒先生が来てくれたのは、今年だったんだろう。私が一年生の時に来てくれたらよかったのに。そしたら三年間一緒にいれたのかもしれないのに。三年生なんて、夏休みが終わって、冬休みが終わったら、すぐに卒業式が来てしまう。すぐに生駒先生とお別れだ。そんなのつまらない。


「あ、有島さん、教室に荷物とか置いてるまま? 下校時間もうすぐだよ、急いで」


 生駒先生がやっと時計を見るのだって、私との時間を惜しむんじゃなくて、先生として生徒の心配をするときだけだ。


「……先生」

「ん?」

「好きです」


 きょとんと、生駒先生は目を丸くした。私も自分が何を言ったのか分からなかった。