「これは小鈴様、急に訪問致しまして申し訳ない。」

「いいえ。
あの、何か私にご用で?」

私は答えた。

「単刀直入に申し上げる。
あなたが飛龍様のお気に入りの姫ですね?」

「いえ…
そんな事は無いと思います。

先日キッパリと振られましてございます。」

私は言った。

「いいえ、あなたですよ。

飛龍様はこうおっしゃいました。

『小鈴がもしも朱雀の姫でなくても後宮に留めることは可能か?』と。」

「えっ…?
飛龍様がそのようなことを…?」

「自信をお持ち下さい。
あなたなら、飛龍様の呪縛を解ける…やもしれません。」

「そうでしょうか…?
私には自信などは…」

「それと、もう一つ確認したき事がございます。」

「何でしょうか?」

私は尋ねた。

「もしも、小鈴様が朱雀の姫では無かった場合…
後宮に留まるのは一向に構いません。
しかし、飛龍様は国のために朱雀の姫様と正式にご結婚されます。

それを見届ける覚悟はおありか?

陰で支える事はできますか?」

春蕾様がおっしゃる。

「私は飛龍様に恋に落ちたとき、どのような境遇でも彼を愛し抜くと決めました。」

私は春蕾様の目を見てそう言った。

「あなたにとっては愚問でしたね。
その言葉を信じます。

明日の第三関門頑張って下さい。」

そうして、春蕾様は去って行った。

♦︎♦︎♦︎

翌日、第三関門が始まった。
それは、今までとは少し違い、飛龍様のお母様、つまり高貴妃様との面談だった。

一体何を喋ったらいいのかしら?

そう思いながら、私の番がやって来た。

「失礼致します。
小鈴でございます。」

「入れ。」

威厳のある声がそう言った。

「そなたが小鈴か…」

「はい、お初にお目にかかります。
どうぞ、よろしくおね…」

そう言いかけたとき、高貴妃は言った。

「雹華は繊細な雪の結晶のようなおなごじゃった。
そなたは雑草のようじゃな!」

え…?
雑草って言われた!?

私は面食らった。

「はぁ…
あの…」

「図太く、果たして正妃としてふさわしいか…
最後に何か言いたい事はあるか?」

「高貴妃様も雑草かと思われます…!」

私は言った。

「なにを!
私が雑草じゃと申すか!」

「私は…
確かに雪の結晶のように繊細ではありません。
雑草のように地に根を張り、踏まれても踏まれても立ち上がる事でしょう。
高貴妃様もそうやって飛龍様を守ってこられた。
私も喜んで草となり、飛龍様を守り続ける事でしょう。

言いたい事はそれだけにございます。」

「ふん!
生意気な!

…下がれ。」

そうして、第三関門は終わった。

もちろん、この関門で、合格者、不合格者はいない。