告白の始まる現場を見てしまったせいで色々考え込んでしまい、体育館への道のりは妙に短く感じた。閉め切りの重い扉を開いて中に入ると、空調がしっかり効いて涼しい反面、声が拡散しないせいで男子の野太い声援と女子のキャンキャンした歓声が爆発していた。思わず耳を塞ぎたくなるのを堪えてコートを見下ろす。入口から一番近いコートはバスケをしていた。


「えーっと……今は……二年一組と三年二組……」


 すぐ近くに貼ってあるトーナメント表を確認してからコートを見るけれど、選手個々人の顔は分からない。大体、知り合いも少ないから二年一組と三年二組が試合をしていたところで何も楽しめない……気がする。

 なんだかつまらなくて、口をへの字に曲げて、座席にもつかずに観戦を決め込む。青色のゼッケンをつけているのが二年生で、得点は一八対二七で二年生優勢。確かに、青色のゼッケンをつけているチームに、一人動きの違う人がいた。他の人も経験者だったりバスケ部員だったりするのかもしれないけれど、それにしたってその一人の動きにだけは玄人ばりのキレがある。ついつい目で追っていると――現に、スリーポイントラインの外側からボールを構えた。


「おぉっ!」


 ストン――、と、そのボールは綺麗な孤を描いてバスケットゴールを通過する。歓声を上げたのは私だけじゃなくて、二年一組の応援勢は歓喜に湧いたし、女子の黄色い声が最早日本語なのかも分からない悲鳴を上げた。

 なんだ、御三家じゃなくてもかっこいい人いるじゃん。うむうむ、と一人で頷いていると、後ろからぺしっと後頭部を叩かれた。


「痛いっ」

「一人で何してんだお前」

「私の後頭部を叩く人といえば……運動神経抜群だけど照れ屋だから女の子の歓声とか実はちょっと耐えられない桐椰くんだ!」

「因みにお前の頭を殴るのも俺しかいねぇからよく覚えとけ」

「あっ、ごめんなさい分かりました殴らないで」


 振り向いたところにいる桐椰くんは、拳片手に頬をひくつかせている。相変わらず短気なんだから。その肩にはタオルがかけてあって、冷房が効いているこの体育館内で半袖ということは運動後、体が温まっている状態らしい。ついでに金髪も運動後のせいでちょっとだけくしゃっとして風に流されたような状態になっていた。


「試合終わったの? 勝った?」