「そうですか? 非常に理性的で僕は賛成しますが」
「んな話してないわよ! 飼う当てもない金魚を掬いたがる年齢ではないってその言い方からしてもう無理! 分かるわよ言ってることは、確かに金魚掬って写真撮ってカワイーとか言ってSNSにアップしてご満悦みたいな馬鹿より全然いいわよ! でも言い方があるでしょ言い方が! 掬っても飼えないからなぁ、くらいでいいじゃないの!」
言い方に込められてる皮肉が半端じゃないわよ!とよしりんさんは遂に私の肩を掴んで激しく揺さぶった。桐椰くんを煽っていたせいで最早煽りのある言い方がデフォになってしまった。月影くんの顔を見ると「こればっかりはよく分からない」と表情だけが答えた。
「はぁー……何よ期待値とか確率とか……はぁー、可愛くない。そんなの数学の教科書の中だけで十分よ。日常会話で使う女がいたらゾッとするわ」
「ここにいますよここに」
「だからゾッとしてんでしょ! 分かってて言うのやめなさいよ! 回る頭はもっと違う方法で使うのよ!」
「吉野、はしまき買って来る」
私とよしりんさんのコントに飽きたのか、松隆くんがピッと一つの屋台を指さした。お祭りの屋台だという事実を捨象してもなお驚く長蛇の列が出来ている屋台だ。この地域の有名なお店が出してる屋台か、ただたんに口コミで広まったか……いずれにせよ他のお店より美味しい、のだろうか。よしりんさんは私の肩を掴んだまま「ん?」とキョトンとした顔をした。
「はしまきって何よ」
「知らないの? お好み焼きを割り箸に巻いたヤツ」
「へー。アナタ知ってる?」
「まぁ。でも言われてみるとほとんど見たことないですね」
一度食べたことああるので、言われて見れば「あぁあれか」とは思うものの、確かにあまり見ないかもしれない。もしかして珍しいから人も沢山並んでるのかな。「地域限定だっけ?」と松隆くんが月影くんを見れば「確か九州地方のものじゃなかったか?」と答えていた。何でも知ってるな、ツッキー。