「あの写真っていつの? 中学生くらい?」
「中学三年生だな」
「あの二人にも仔犬みたいな時期があったんだね」
今は背も伸びてすっかり可愛くなくなっちゃって、と付け加えると「別に二年前だからといって可愛いわけではないが?」と真顔で疑義を呈された。月影くんがあの二人を可愛いと言い始めたら流石に問題がある気がするので謎の安心をした。
「おい駿哉……さっきの写真何だったんだ。早く見せろつーか消せ」
「俺の勝手だが?」
松隆くんと桐椰くんは暫く月影くんのスマホと格闘していたけれど、遂に諦めたらしく月影くんの胸座を掴み上げている。それなのに月影くんはどこ吹く風だ。
「ツッキー、いつの間にあんな写真撮ったの?」
「弱味は握れるうちに握っておくものだ」
「駿哉!」
「月影くんまで松隆くんみたいで私は辛いです」
「それどういう意味、桜坂」
「で、仲直りはする気になったか?」
月影くんの持つ写真を巡って (ほんの数分でも)共同戦線を張っていたわけだし、もういい加減に気もすんだだろうということだろう。それなのに二人は月影くんの言葉を聞いた瞬間に苦虫を噛み潰した。
「別に喧嘩してねぇよ」
「いつも通りだろ」
「……好きにしろ」
面倒くさい、という声が透けて聞こえた。でも私も同意しよう。当事者だけど、面倒くさい。桐椰くんは髪を拭いていたタオルを首にかけたまま二階に消えたし、松隆くんはわざわざヘッドフォンを装着してソファに寝転び直した。私は月影くんからスマホを借りて、二人の写真をもう一度見せてもらう。桐椰くんの髪は既に金色だし、松隆くんも髪が茶色いし、本当に仔犬みたいた。ソファが同じだから中学生のときもこの別荘に遊びに来ていたのだろうか。遊び疲れて寝てたのかな。