「私に面白い話ないのでお姉さん達の話のほうが、」
「だーって彼氏いなくてあのレベルが近くにいたら好きになっててもおかしくなくない? そこのとこどーなの、正直」
やはり自分の話題を避けたいのか、ショートボブのお姉さんは私の肩を組み、男性陣に聞かれないように声の音量を下げた。残り二人のお姉さんも「そうそう」なんて頷きながら私を取り囲む。
「さっき駿哉くんって答えたけど絶対適当だったし? 本命は残り二人のどっちか?」
妙に鋭いなこのお姉さん達……! 月影くんを指すとき、そんなに心が籠ってなかったかな。今後は心を込めて月影くんを褒めることにしよう。その度に殺意の籠った目で睨まれるだろうけれど耐えよう。
「どっちもないです……」
「いやーだってあの三人は冷静に迷うよね! 駿哉くんは完全に阪口の上位互換でしょ? 将来有望の秀才!」
「おい聞こえてる」
逆に言えば月影くんの下位互換だという阪口さんは苦笑いしていた。私から見れば阪口さんのほうが月影くんの上位互換なのだけれど、隣の芝は青いってやつかな。ちょっと違うか。
「私はマッツーだわ。顔が激タイプだわ。めっちゃくちゃに整ってるもん。王子顔好きだもん私」
「えー、アタシ遼くん好きなんだけど……いい体してるじゃん、抱かれたーい」
「ちょっと相手高校生でしょー。犯罪だよ犯罪」
なんだか物凄く聞き覚えのある会話だと思ったら、御三家の存在を知ったばかりの五月に舞浜さん達が話していたことそっくりだ。今回は三人の見た目だけの勝負ではあるけれど、推しメンは誰、なんて話題なんだから似たような話にはなってしまうのは当然だ。
「因みに月影くんはツンデレですよ」
「マジ!? 最高に萌えるじゃん!」
「桐椰くんはあの見た目で料理上手で甘いもの好きでコーヒーが飲めません」
「可愛い……抱かれたいっていうか抱きたい……」
「ちょっとやめなさいよアキちゃんの前で!」
「松隆くんはあの見た目で死ぬほど腹黒いです……」
「なんか分かるかも」
顔も性格もいいなんてそう上手いこといかないよねー、とお姉さん達は楽しそうに声を上げて笑った。