「ねー、アキちゃん的にはどう? 誰が一番カッコいい?」
「え? あー、じゃあ黒い髪と眼鏡のお兄さん?」
「違う! あたしらの中じゃなくて!」
まぁそれでもいいんだけど、阪口は嬉しそうだし、とお姉さん達は楽しそうに笑った。指名した黒い髪のお兄さん (阪口さん?)もぐっとガッツポーズをして「よっしゃ」と笑っている。
「遼くん達の中で! みんな同級生なんでしょ? これだけイケメン揃いだったら甲乙つけがたいだろうけどさ!」
圧倒的なまでの地雷を正面から踏みに来られて一瞬固まった。桐椰くんがピクリと身動ぎしたのが分かる。松隆くんはコートに行ったので聞こえていない。月影くんは自分には関係なさそうな顔をしている。
「普段は眼鏡をかけているそこの黒い髪の人ですかね」
「……射殺さんばかりの目で見られてるけど大丈夫?」
「彼はツンデレなんです」
だってよしりんさんが選択肢から除外されたら消去法で月影くんを答えるしかないじゃん! やめてよその「人を安牌だと思っていいように使うな」と言わんばかりの目! その通りだよ月影くんが唯一絶対の安牌なんだよ!!
「お姉さん達はここらへんの大学の人なんですか?」
「そうそう、山鴻大学ってとこ」
「大学はあれだけど、やっぱ近場に海あるとこに住めるのはいーよー」
「高校二年生だっけ? 高校慣れてきて一番楽しいよねー」
「高校生戻りたいなー」「やだよ受験したくないし」「大学のほうが楽しいじゃん」と確かにお姉さん達は楽しそうだ。
「てか高校生で旅行って仲良いね?」
「私はオマケです、オマケ」
お姉さん達もさぞ奇妙に思っただろう。三人の幼馴染と一人の保護者がいるところまでは分かるけれど、なぜ一人無関係な子が混ざっているのだろう、と。しかもたかだか数ヶ月の付き合いの女の子が。