「わふっ」

「大体お前もそんな恰好してんじゃねーよ! 上に着ろ!」

「桐椰くんだっていい体してるじゃん」

「うるせぇよ!!」


 特にその体を注視したわけではないし、ただからかうためだけに咄嗟に口にしたのだけれど、実際桐椰くんはいい体なんだと思う。よしりんさんが隣にいるとちょっと頼りなく見えるかもしれないけど、十分しっかりした体躯だと思う。そんなよしりんさんは私の肩に腕を回したまま「ふふふ」と笑っている。


「やだわー、遼ちゃん、いつの間にそんなイケメンなことするようになったの? 俺のパーカーでも着てろなんて」

「だからうるせぇって言ってんだよ! コイツの格好が目に毒だって言ってんだよ!! 吉野出るなら自分で言えよ!!」


 からかい過ぎた。耳まで真っ赤になった桐椰くんはさっきまで話していた女の人のところへ戻ってしまった。月影くんは「俺が出るのは確定したのか……」と諦めたように本を閉じる。


「二人が出るならアタシも出ようかしら。総ちゃん誘えば出るだろうし。でもアナタ暇になるわね」

「観戦も楽しいのでそれでもいいですよ。どうせ二組が一気に出るなんてないでしょうし」

「物分かりのいい女ね、アナタ」


 取り敢えず、桐椰くんに投げつけられたパーカーを手に取って畳む。どうせ上に羽織るなら最初に来ていたTシャツを着るし、これは必要ない。着てると松隆くんに喧嘩を売るようなものだし……。やっぱりなんともやりにくいなぁ。一人顔をしかめてしまった。