ルームミラー越しではあったけれど、今日初めて、よしりんさんと目が合った。ほんの一瞬、コンマ一秒数えられる程度のその一瞥には、諫言が込められていた。私の体が硬直したことに気付いたのか、よしりんさんは「厳しいことを言ったかしら」と自分を窘めた。
「言い方を変えるわ。貴女が昔の男を今好きじゃなくなっても、誰も貴女を責めないし、責める権利なんて持ってないわ」
ほんの少しの、タイムラグ。
「何度も言うけど、花の命は短いのよ。花が咲いてる内に恋しなさい」
さっき分からなかった感覚の正体が分かった。よしりんさんの言うとおりだ。思わず、膝の上で拳を握りしめてしまう。──罪悪感だ。
「……よしりんさんは、本当になんでも見通しなんですね」
「伊達に恋愛経験豊富じゃないわよ。何でも相談しなさい。総ちゃんの告白方法とか話してくれていいわ」
「……よしりんさんと付き合いたい」
「悪いわね、アタシ、実は年下に興味ないのよ。弟か妹にしか思えないから」
そう言いながらも笑ったよしりんさんの顔は、今日一優しかった。
その後、よしりんさんの手厳しい意見を頂きながらご所望の水着を買い、再び別荘に舞い戻る。玄関を開けると、入って右手が和室、左手が吹き抜けのリビングになっていた。南向きだということを考えると、どうやらメインの部屋は左側になるようだ。リビングを見下ろす半螺旋状の階段を目だけで追えば、二階に数室とバルコニーが見えた。リビングには二人掛けのソファが一つ、三人掛けが一つ、テーブルを囲むように置いてあって、五十インチくらいありそうなテレビを斜めに見る形になっている。南向きにベランダがあって、浜辺に面しているのですぐに海に行けるどころか花火の上がる位置によっては絶好の観覧スポットになりそうだ。西側にはキッチンがあって、北側に浴室がある。そしてもちろん、室内は気持ちよく冷房が効いている。一頻り観察して回った後、ほーっ、と感嘆の息を吐く。
「すっごい。別荘なのに完全に普通に住めちゃう家じゃないですか!」
「本当そうよねー。それなのに買ったご本人は仕事が忙しくて息子とその友達が夏に使うだけっていうんだから勿体ないわ」
「言い方を変えるわ。貴女が昔の男を今好きじゃなくなっても、誰も貴女を責めないし、責める権利なんて持ってないわ」
ほんの少しの、タイムラグ。
「何度も言うけど、花の命は短いのよ。花が咲いてる内に恋しなさい」
さっき分からなかった感覚の正体が分かった。よしりんさんの言うとおりだ。思わず、膝の上で拳を握りしめてしまう。──罪悪感だ。
「……よしりんさんは、本当になんでも見通しなんですね」
「伊達に恋愛経験豊富じゃないわよ。何でも相談しなさい。総ちゃんの告白方法とか話してくれていいわ」
「……よしりんさんと付き合いたい」
「悪いわね、アタシ、実は年下に興味ないのよ。弟か妹にしか思えないから」
そう言いながらも笑ったよしりんさんの顔は、今日一優しかった。
その後、よしりんさんの手厳しい意見を頂きながらご所望の水着を買い、再び別荘に舞い戻る。玄関を開けると、入って右手が和室、左手が吹き抜けのリビングになっていた。南向きだということを考えると、どうやらメインの部屋は左側になるようだ。リビングを見下ろす半螺旋状の階段を目だけで追えば、二階に数室とバルコニーが見えた。リビングには二人掛けのソファが一つ、三人掛けが一つ、テーブルを囲むように置いてあって、五十インチくらいありそうなテレビを斜めに見る形になっている。南向きにベランダがあって、浜辺に面しているのですぐに海に行けるどころか花火の上がる位置によっては絶好の観覧スポットになりそうだ。西側にはキッチンがあって、北側に浴室がある。そしてもちろん、室内は気持ちよく冷房が効いている。一頻り観察して回った後、ほーっ、と感嘆の息を吐く。
「すっごい。別荘なのに完全に普通に住めちゃう家じゃないですか!」
「本当そうよねー。それなのに買ったご本人は仕事が忙しくて息子とその友達が夏に使うだけっていうんだから勿体ないわ」