結局、何も思いつかなかった。私と雅が揃って助かる方法なんてなかった。為すすべなくへたり込むしかないなんて、情けないにもほどがある。しかもこれは、私が招いたことだ。
「月影くんはあんまり見ないよ」
「ソイツはどーでもいいんだよ」
「御三家の中でも松隆くんと桐椰くんなんだっけ? 松隆くんは既読が付く時間が決まってるけど、この時間に連絡したことないから」
時間を、稼がなきゃ。あの三人がここに来るまで一時間はかかるだろう。既読をつけていないだけで見ているとしても、これから一時間以内にあの三人が来ることは地理的に不可能だ。一時間もあれば、下着姿で座り込んでいる私に妙な気を起こすのも、気絶している雅が意識を取り戻してから痛めつけるのも、十分すぎる時間になる。
「さ、てと。暇だなぁ、御三家が来るまで」
一人が私の前に屈みこみ直す。私の胸元を舐め回すように見ているその顔にどう言葉を返そう。可愛くないと嘆き続けていたから、挑発したら殴るだけで終わってくれるだろうか。喉はからからに渇いてしまって、声が上手く出なかった。
「あなた、も……幕張に、恨みがあるの?」
「いや? 俺は桐椰遼だよ」
「……桐椰くんと喧嘩したの?」
「涼しい顔して容赦しねぇからさぁ、ホント、アイツの顔が歪むの見てみたいわ」
にぃっと弧を描いた唇の中心にピアスが刺さっていた。何か会話を続けなきゃともう一度口を開いたけれど、「それよりさぁ、」と先にその人がもう一度喋った。
「アンタ、桐椰遼のカノジョなんだって?」
不意に、つぅ、と首から胸元をざらついた指の腹がなぞった。ゾッ――と、言いようのない恐怖が全身を駆け巡る。
「え、そーなの? 菊池は?」
「だから元カレだろ?」
「松隆は?」
「その写真が桐椰とカップルやってんじゃん?」
「月影くんはあんまり見ないよ」
「ソイツはどーでもいいんだよ」
「御三家の中でも松隆くんと桐椰くんなんだっけ? 松隆くんは既読が付く時間が決まってるけど、この時間に連絡したことないから」
時間を、稼がなきゃ。あの三人がここに来るまで一時間はかかるだろう。既読をつけていないだけで見ているとしても、これから一時間以内にあの三人が来ることは地理的に不可能だ。一時間もあれば、下着姿で座り込んでいる私に妙な気を起こすのも、気絶している雅が意識を取り戻してから痛めつけるのも、十分すぎる時間になる。
「さ、てと。暇だなぁ、御三家が来るまで」
一人が私の前に屈みこみ直す。私の胸元を舐め回すように見ているその顔にどう言葉を返そう。可愛くないと嘆き続けていたから、挑発したら殴るだけで終わってくれるだろうか。喉はからからに渇いてしまって、声が上手く出なかった。
「あなた、も……幕張に、恨みがあるの?」
「いや? 俺は桐椰遼だよ」
「……桐椰くんと喧嘩したの?」
「涼しい顔して容赦しねぇからさぁ、ホント、アイツの顔が歪むの見てみたいわ」
にぃっと弧を描いた唇の中心にピアスが刺さっていた。何か会話を続けなきゃともう一度口を開いたけれど、「それよりさぁ、」と先にその人がもう一度喋った。
「アンタ、桐椰遼のカノジョなんだって?」
不意に、つぅ、と首から胸元をざらついた指の腹がなぞった。ゾッ――と、言いようのない恐怖が全身を駆け巡る。
「え、そーなの? 菊池は?」
「だから元カレだろ?」
「松隆は?」
「その写真が桐椰とカップルやってんじゃん?」