「君はまるで道化師だな」
唐突な発言に、目をぱちくりした。脈絡のないように感じられるということは、それは月影くんがかねてより抱いていた所感なのだろうか。
「……どういう意味?」
「以前話しただろう、俺は君を信用しないと。君が自分の何も話さなくても全く構わないが、代わりに俺は君を信用することは決してない」
その話をしたのは、月影くんのことを知って間もないころだ。といっても、今でもほんの二ヶ月程度だけれど……もっと最初、会話をして一日目とか二日目とか、そのレベルのとき。
「それは今でも変わらない。君には分からないことがごまんとある。挙句の果てに、随分と演技が上手いときたものだ」
「褒められてる?」
「皮肉だ。気付いてないとは言わせない」
あぁ、厳しいな、月影くんは……。桐椰くんのように、私の言葉に振り回されることはない。松隆くんのように、駆け引きをする気もない。
そう考えて、月影くんの言動に首を捻った。そうだというのなら、月影くんのいまの台詞は何のためにあるのだろう。
「君が隠していることは、御三家に言えないことか?」
いつもは眼鏡のレンズ一枚隔てている月影くんの怜悧な瞳が、真っ直ぐに私を射抜いた。
「遼のように拗ねて喚き散らすつもりはない。ただ訊いている、君は、俺達に何も言わないまま残りの高校生活を終えるか、と」
それは、弾劾にも似た反語的な念押しだった。
「やだなー、月影くん。そんな怖い顔、しないでよ」
思わぬ伏兵というべきか。一番怖いのは松隆くんだと思っていたのに、月影くんが――私に一番興味のなさそうな人が――こんな直截的に訊ねてくるなんて、思いもしなかった。お陰で声が幾分掠れる。
「まるで、私が何か言わなきゃいけないことを隠してるみたいに聞こえるよ」
「言わなければいけないことかどうかは知らない。ただ、あまり遼を振り回すなよ」
……弾劾だと感じた、先ほどの自分の認識を改めた。
「……どーいう意味?」
「それも分からないと言うつもりか? ……アイツは馬鹿正直過ぎる」
どうやら、その点に関しては私が本当に分からないのだと分かったらしい。
「もし、君にその気がないなら、早くアイツに諦めさせろ」
「……えーっと」
唐突な発言に、目をぱちくりした。脈絡のないように感じられるということは、それは月影くんがかねてより抱いていた所感なのだろうか。
「……どういう意味?」
「以前話しただろう、俺は君を信用しないと。君が自分の何も話さなくても全く構わないが、代わりに俺は君を信用することは決してない」
その話をしたのは、月影くんのことを知って間もないころだ。といっても、今でもほんの二ヶ月程度だけれど……もっと最初、会話をして一日目とか二日目とか、そのレベルのとき。
「それは今でも変わらない。君には分からないことがごまんとある。挙句の果てに、随分と演技が上手いときたものだ」
「褒められてる?」
「皮肉だ。気付いてないとは言わせない」
あぁ、厳しいな、月影くんは……。桐椰くんのように、私の言葉に振り回されることはない。松隆くんのように、駆け引きをする気もない。
そう考えて、月影くんの言動に首を捻った。そうだというのなら、月影くんのいまの台詞は何のためにあるのだろう。
「君が隠していることは、御三家に言えないことか?」
いつもは眼鏡のレンズ一枚隔てている月影くんの怜悧な瞳が、真っ直ぐに私を射抜いた。
「遼のように拗ねて喚き散らすつもりはない。ただ訊いている、君は、俺達に何も言わないまま残りの高校生活を終えるか、と」
それは、弾劾にも似た反語的な念押しだった。
「やだなー、月影くん。そんな怖い顔、しないでよ」
思わぬ伏兵というべきか。一番怖いのは松隆くんだと思っていたのに、月影くんが――私に一番興味のなさそうな人が――こんな直截的に訊ねてくるなんて、思いもしなかった。お陰で声が幾分掠れる。
「まるで、私が何か言わなきゃいけないことを隠してるみたいに聞こえるよ」
「言わなければいけないことかどうかは知らない。ただ、あまり遼を振り回すなよ」
……弾劾だと感じた、先ほどの自分の認識を改めた。
「……どーいう意味?」
「それも分からないと言うつもりか? ……アイツは馬鹿正直過ぎる」
どうやら、その点に関しては私が本当に分からないのだと分かったらしい。
「もし、君にその気がないなら、早くアイツに諦めさせろ」
「……えーっと」