それなのに、どこか心臓が速くなってしまう自分が腹立たしい。

それでも、私だって警戒心がない訳じゃない。

だから、夜の約束は断ろうと、その日何度か電話をかけた。



それなのに、その男性は電話に出なかった。



忙しくて電話に出れなかったのかもしれない。

どちらにしても、会う義理なんてない……はずだし。

留守番電話で「行けません」って言葉を残したし。

だから、本当に一応……本当に一応だけれど、その日の夜8時に駅の正面を覗きに行った。




きっとそれはこれから始まるこの恋のきっかけだったのだと思う。




甘い溺愛の始まりだったのだと思う。




その男性は……当たり前のように駅の前に立っていた。




これから私の世界に甘さが加わる。