落ち着いて、私の心臓。

この人は私の読んでいた少女漫画に「こんなヒーローいない」と言い放った人……!

男性はもう一度、私の持っている少女漫画に目を向けた。



「まぁ、そんな格好良いこと言う医者はいないと思うけど。見たことないし」



男性はもう一度そうはっきりと言った。

その時、男性が「あ」と声を上げた。

「なんですか……?」

「別に君の読んでた漫画を否定したかった訳じゃないから」

「否定してたじゃないですか……!」



「そう聞こえたなら確かに悪かった。ただ君が楽しく時間を過ごせたなら、それに越したことはないと思ってるだけ」



男性はそう言って、私との会話を終えてしまう。

どこか掴みどころのないその男性が私は少しだけ気になってしまった。