30分後。

あと15分で、目的に着く位の時間だった。

私は荷物を整理して、あとは外の景色でも楽しもうと思った瞬間……



座席についている机から、先ほどの少女漫画がバサっと男性の足元に落ちた。



慌てても時はすでに遅く、隣の男性は「ん……」と小さな声で目を覚ました。

そして、そのまま足元の少女漫画を拾ってくれる。

私はすぐに小さな声で「すみません!」と謝った。

しかし、男性は返事をせずに何故か私の落とした漫画を見つめていた。

漫画はどうやらページを開いた形で落ちたようで、男性はそのページを見つめている。

私は意味が分からないまま男性にもう一度声をかけた。





「あの……?」





「こんな医者いないよ」





男性はそれだけ言って、私に漫画を返す。

男性に返された漫画の開かれたページを見ると、ヒーローである医者がヒロインを押し倒しながら「お前以外要らない」的なことを言っているシーンだった。

そう少女漫画で絶対に必要な普通の胸キュンシーン。