末永(すえなが) 奏葉(かなは)、普通の会社員だけれど、私の勤めている会社は出張が多い。

そんな私の移動時間の楽しみは、漫画を読むこと。

今日も出張に向かう新幹線に乗りながら、私はバッグから漫画を取り出した。

どんなジャンルでも読むが、今日は偶然本屋で見つけた少女漫画の気分だった。

新幹線が出発する5分前には、私はもう漫画の世界に入り込んで読んでいた。

だから、出発ギリギリに隣の席に別の人が来たことに気づいたが、特に気にしていなかった。


(はー、面白かったー!)


心の中でそう叫んで、少しだけ背中を伸ばす。

パッと隣の席に目を向けると、綺麗な顔の男性がすやーっと寝ていた。


(っ!? さっきの少女漫画に出てくるヒーローよりイケメンなんだけど!)


しかし、すごく顔は整っといるが、どう見ても疲れているように見える。

別に普段から声を出すわけでも、物音を立てるわけでもないが、私はそっと心の中で「ゆっくり寝かせてあげよう」と思った。