どこからか、聴き覚えのある切ない歌声と音色が微かに聞こえてきた。
わたしはハッとした。
そして、歌声と音を頼りに、再び歩き始めた。
すると、ある1軒の古本屋の目の前に辿り着いたのだ。
その歌声と音色は、その古本屋の中から聞こえてきていた。
わたしはドキドキしながら、その古本屋の扉を引いた。
それと共にカランカランと扉に下げていた飾りが鳴る。
中を覗くと、本棚が並ぶ一番奥のレジ台の向こう側にギターを弾き語りする凌さんの姿をがあったのだ。
やっと、見つけた、、、
わたしの瞳からは自然と涙が溢れていた。
店の扉が開く音に歌を止め、顔を上げる凌さん。
凌さんは、わたしを見るなり、目を見開いて驚いた表情を浮かべていた。
わたしは店内に入り、凌さんの目の前までゆっくりと歩いて行く。
凌さんを見つけられた嬉しさから、自然と笑みが溢れていた。
「会いに来ました。」
わたしがそう言うと、凌さんは驚きの表情のまま「天音ちゃん?」と言った。
何と、わたしの名前を覚えてくれていたのだ。