その週の土曜日、わたしは朝からキッチンに立ち、お弁当を二人分作っていた。
一つは自分の、もう一つは凌さんの分だ。
「あら、何してるの?お弁当?」
起きてきたお母さんがキッチンを覗きに来て、そう言った。
二人分のお弁当を見たお母さんは「あらぁ〜、彼氏の分も作ってるの?仲直りしたのね。」と茶化してくる。
わたしは「彼氏じゃないってば!てゆうか、見ないで!」と言い、お母さんの背中を押し、キッチンから追い出した。
お母さんは楽しそうに笑うと「頑張んなさいよ!」と言い、リビングから出て行った。
お店の開店は10時から。
わたしはお昼ご飯を凌さんと一緒に食べる為、11時半頃にお店へ向かった。
いつものようにお店のドアを開けると、カランカランと音が鳴り、レジ台の向こう側に居る凌さんがこちらを向く。
今日の凌さんは眼鏡をかけ、本を読んでいた。
「おはようございます!」
「おはよ。」
挨拶と共に凌さんは眼鏡を外した。
眼鏡姿の凌さんも素敵だ。
「今日は来るのが、随分早いな。」
そう言って本を閉じる凌さん。
わたしは「凌さんが食べ物食べてるの見たことないんで、お弁当作って来ました!」と言うと、お弁当が入っている保冷バッグを持ち上げて見せた。