凌さんは閉店業務を終え、お店に鍵を掛けると「こっちだ。」と言って歩き出した。
その凌さんの後ろをついて歩くわたし。
実は前々から決めていたのだ。
もし、20歳になって凌さんに会えたら、凌さんに"初めて"を捧げたいと。
やはり、"初めて"は好きな人としたい。
だから、わたしの中では凌さんしかあり得なかったのだ。
古本屋を出て5分も経たない内に、凌さんはあるアパートに向かって行った。
2階建ての割と古めのアパートだ。
凌さんは2階に上がると、一番奥の部屋の鍵を開けた。
「ここが、俺んち。」
そう行って凌さんはドアを開け、中へ入って行く。
わたしもそれに続き、「お邪魔します、、、。」と中に入り、ドアを閉めた。
部屋の中を見渡すとワンルームで、ベッドにテレビ、テーブル、そして3本のギターしかない、無駄なものがないシンプルな部屋だった。
ラグが敷いてあるが、和室らしく畳のニオイがする。
凌さんはベッドに腰を掛けると、自分の隣をポンポンと叩いた。
わたしは靴を脱いで家に上がると、ゆっくりと凌さんの近くまで歩み寄り、そしてそっと凌さんの隣に腰を掛けた。