あまりにびっくりして、持っていたコーヒーカップを落とすところだった。

危ない。ソファにコーヒーの染みなんかつけたら、さすがに誤魔化しきれないぞ。

驚いてカップを倒してしても良いように、コーヒーを一気に飲み干し。

俺は、改めて報道されているニュースを確認した。

ニュースでは、アナウンサーが海を一望出来る港の近くに立って、神妙な顔をしてリポートしていた。

アナウンサーの後ろでは、黄色い立ち入り禁止のテープが幾重にも張られ、後ろで警察が何人も作業しているのが見えた。

この海は…俺が、Bちゃんの遺体を捨てた海だ。

行方不明の女児見つかるって…。やっぱり、Bちゃんのことだよな?

昨日の夕方までは、全然見つかる様子もなかったのに。

まさか昨日の今日で、遺体が発見されているとは。

報道によると、遺体が見つかったのは今朝、午前五時頃だったらしい。

その海域で漁をしていた漁師が、網の中に黒いビニール袋を見つけたそうだ。

重石をつけられ、鎖でぐるぐる巻きにされたそのビニール袋を、船に引き揚げ。

これは一体何なんだと調べてみたら、中からぐちゃぐちゃになった遺体が出てきた…と。

発見した漁師は、きっと一生モノのトラウマになったことだろう。

その漁師が警察に連絡し、こうして報道されるに至った…と。

成程、俺が屋根裏の寒さに震えて、ぼんやり風呂入ってる間に、そんなことが。

この様子だとまだまだ見つからないと、軽く考えていたら。

まさか、漁師の網にかかるとは。

今まで何度も海に遺体を捨ててきたものだが、そんな間抜けな理由で見つかることもあるんだな。

これからは気を付けよう。

すると。

現場のリポーターが、慌てて後ろを指差した。

「今!たった今、女児の遺体が運ばれていきます」

リポーターの後ろから、警察が何人も群がって、青いビニールシートで目隠ししながら、何かを担架で運んでいた。

そこを通して!下がって!と警察が叫ぶ声が聞こえてきた。

あのビニールシートの中に…俺が捨てたBちゃんの遺体があるのだろう。

海に捨てられてから、およそ三日。

冷たい海の底で、どれだけ遺体の腐敗は進んだのだろうな。

多分、原型を留めてはいないだろう。

Aちゃんの遺体と違って、見つかったのが遅かった。

それでも、俺の予想よりはずっと早かった。

見つかるにしても、もうすっかり骨になってからだと思っていた。

意外に早かったな。

Bちゃんの遺体は、救急車に乗せられて運ばれていった。

これから、身元の特定が行われるのだろう。