翌朝。

家族が全員出払ってしまってから、俺は屋根裏から出て、リビングに降りた。

ずっと横になっていたから、立ち上がると凝り固まった筋肉がほぐれて、気持ちが良かった。

まず真っ先にやったことは、テレビをつけることだった。

Bちゃんの遺体が発見されたのかも気になるし。

Aちゃん殺害事件の捜索が、どれくらい進んでいるのかも気になった。

勿論、実際の捜査の進捗状況と、テレビで報道されるニュースに相違があるのは分かっている。

テレビではまだ犯人は分からないと言いつつ、実はもう目星がついていたりもするのだ。

それでも、やっぱり参考になるのはニュースと…それから新聞だ。

俺はテレビをつけて、ニュースを確認してみた。

一晩たっても、やはりAちゃんの報道で持ちきりだった。

そして、行方不明のBちゃんの捜索が続けられている…とのこと。

ということは、Bちゃんはまだ見つかってないんだ。

まぁ、海の底だからな。

俺としても、あれだけ頑張った隠蔽したのだから、そう簡単に見つけられては困る。

次に俺が知りたいのは、犯人の目星がついているのかどうか。

今のところ、犯人についての情報は報道されていなかった。

現場付近の監視カメラ映像や、犯人の目撃情報がないかを調べているらしい。

実に悠長なことだ。

俺は監視カメラのある場所では少女を襲っていないし、人の目も充分気を付けているから、犯行を目撃されてはいないはず。

何より、俺はまだこの世界に来たばかりだ。

戸籍もなく、俺が存在している証拠は何処にもない。

完全に、存在していない人物なのだ。

そんな人間を、いくら警察といえども…探すのは不可能だろう。

少なくとも、今は。

「…」

一通り報道を観て、次のニュースに移ったところで、俺はテレビを消した。

次に、リビングのテーブルの上に無造作に置かれている新聞を手に取った。

勝手に新聞読ませてもらいます。済みません。

新聞の一面は、「少女惨殺死体で見つかる」というセンセーショナルな見出し。

…やっぱりこんな事件が起きれば、一面にも載るよな。

一面記事を一通り読んでみたが、やはり犯人についての情報と、Bちゃんの行方については書かれていなかった。

まだ見つかってないんだ。

俺はホッとして新聞を閉じ、もとの場所に戻した。

これでうっかり戻す場所を間違えると、「朝ここに置いたはずの新聞がない」と家族に不審に思われてしまう。気を付けなくては。