…次に気がついたときには、床下が騒がしくなっていた。

すぐ下から、人の話し声がする。

どうやら、この家の家族が帰ってきたらしいな。

昼間に他人が侵入し、しかもまだ屋根裏に潜んで、我が物顔で眠っていたとは、彼らも思っていないだろうな。

良かった。目が覚めて。

うっかり寝返りを打って、屋根裏の床がみしみし言ってたら。

下にいる彼らに怪しまれていたかもしれない。

俺は微動だにせず、床下の話し声に耳を澄ませた。

…どうやら、高校生らしい男の子が、その日あった部活の話をしているようだ。

良かった。やっぱり怪しまれている様子はない。

俺はホッとしたが、しかし。

家族の誰かがテレビをつけた途端、安心してもいられなくなった。

テレビでは、ニュースが流れているらしい。

「緊急…です。昨日…で行方…に…いた、Aちゃん…遺体で…ました…」

途切れ途切れにしか聞こえないが。

アナウンサーが、何やら切羽詰まった口調で話していることは分かる。

更に、下にいた男子高校生が。

「うわっ、これ昨日行方不明になってた子だろ?死んでたんだ」

「惨殺されてたって。こえぇ~」

そんな会話をしているのが、聞こえてきた。

…ここからでは、テレビは観えないけど。

間違いない。ポリバケツに投げ込んだAちゃんの遺体が、警察に見つかったのだ。

「まぁ、可哀想に…。まだ六歳なのに…」

高校生の母親らしい、中年女性の声が聞こえてきた。

そして、中学生の女の子の声も。

「もう一人行方不明になってた子、いたよね?もしかして、その子も殺されたのかな?」

「そうかもしれないね。そっちは、まだ見つかってないみたいだけど…」

…Bちゃんのことか。

彼女の方は、なかなか見つからないだろうな。

「物騒だな…。早く犯人が捕まれば良いんだが」

と、父親の声。

…犯人、あなた達の頭上にいるけど。

知らない、気づかないというのは幸せなことだな。

こんなに早くAちゃんの遺体が見つけられたのなら、やはりここに隠れておいて良かった。

俺は心からそう思った。