次に、二階を見て回る。

二階にはリビングとキッチン、バスルーム、そして夫婦の寝室があった。

俺は勝手にバスルームを使わせてもらい、汗と、染み込んだ血の臭いを洗い流した。

バスタオルはこの家のものを勝手に使用したが、洗って乾燥機で乾かして、もとあったところに戻しておいた。

まずバレないだろう。

それからリビングのソファに腰掛け、テレビをつけた。

家主がいないのを良いことに、くつろぎ放題である。

丁度、正午のニュースの時間だった。

もし昨日俺がゴミ箱に投げ捨てた死体が見つかったのだとしたら。

きっとニュースは、その話で持ちきりのはずだ。

しかし、ニュースでは、政治家の汚職事件が取り上げられていた。

良かった。まだ見つかってないんだ。

少しホッとした。

安心したのも束の間、汚職事件のニュースの後。

「続いてのニュースは、◯◯区に住む六歳のAちゃんが行方不明になっている件についてです」

「…!」

俺はハッとして、アナウンサーの言葉を聞いた。

「Aちゃんは昨日、幼稚園を出て、帰宅中に行方不明になったものと思われています。警察が付近を捜索し、目撃情報を集めていますが、今のところ見つかっておらず…」

…昨日俺が殺した、一人目の子だ。

…あの子、Aちゃんという名前だったのか。

スモックの名札に名前が書いてあっただろうに、全く気づかずに殺してしまった。

そして、ゴミ箱に投げ込んでしまった。

罪悪感に駆られて気分が悪くなった、そのとき。

「更に昨日、近くの△△区でも少女が行方不明になっています。五歳のBちゃんは、母親の運転する車で郵便局に行き、母親が十分ほど車を離れている間に行方が分からなくなり…」

「…」

こちらは、二人目だ。

こっちも…もう、捜索願いが出されたんだな。

当然か。

中高生の家出とは訳が違うのだから。

「警察は、事件の可能性も視野に捜索を進めています…」

…ふーん…。

二人共捜索願いが出ているのなら…。しかも、Aちゃんが行方不明になったあの商店街を、警察が探しているのなら。

ゴミ箱に捨てたAちゃんの遺体は、遠からず見つかってしまうだろうな。

時間の問題だ。

だが、Bちゃんの遺体の方は、簡単には見つけられまい。

とにかく、遺体が発見されてしまうのなら、やはり俺は今しばらく、大人しく隠れていた方が良い。

この家で、厄介になるしかなさそうだ。