俺は夜の間に、遠くまで移動した。

木を隠すなら森の中。

人を隠すには街の中だ。

出来るだけ都市部に移動して、良さげな住宅街を見つけた。

夜が明ける頃、俺は適当に目をつけた家の物置に潜んで、その家の家族が全員出掛けるのを待った。

俺が目をつけた家は、子供が三人いる五人家族の住まいだった。

子供達が全員登校し、両親も仕事に出かけて、家の中が無人になるまで、物置に隠れ。

人の目がないのを確認して、玄関の鍵をピッキングで開け。

無人の家の中に、難なく侵入した。

「…」

玄関をきょろきょろと見渡す。

きちんと片付いた家じゃないか。

この家は、一階がガレージになっていて、二階にリビングがあるタイプの造りになっている。

珍しいな。

まぁ、住む家なんて何でも良い。余程汚い部屋でない限りは。

あぁ、それと屋根裏にネズミとかが出る家でなければ良い。

何故なら俺はこれから、この家の屋根裏に住むからである。

人目から隠れたいときは、いつもこうしている。

俺はまず、家中の部屋を物色した。

一階ガレージの横には、二部屋。

その二部屋は、子供部屋であるらしい。どちらの部屋にも勉強机が置いてあった。

片方の部屋には机が二つ、もう片方の部屋には一つ。

本棚に無造作に積まれているテキストの名前欄を見てみたところ、男女で部屋を分けてあるらしいことが分かった。

テキストから推測するに、高二と高一の男の子が一人ずつ。

それから、中一の女の子が一人。

俺は男子高校生の部屋の押し入れから、冬用のコートとセーターを一枚ずつ拝借した。

これ以上盗むとバレかねないので、このくらいでやめておく。

一枚二枚なら、案外気づかないものだぞ。

これは経験則である。