俺は少女の遺体を、黒いビニール袋に入れた。

本当は、遺体だけでも家族に返してあげたかった。

こんな無惨な姿で殺された遺体でも、家族としては、ちゃんと燃やして遺骨にして、墓に埋めてあげたいだろうから。

でも、それは出来ない。

この子の遺体が発見されれば、警察がいつか、俺のもとに辿り着くかもしれない。

それは困る。

「前の」世界でもそうだった。

遺体の隠蔽が上手く行かなくて、あっさりと捕まえられてしまった。

捕まえられて、閉じ込められてしまうと、もう少女を食べることが出来なくなってしまう。

それは駄目なのだ。

だから俺は、わざわざ世界を移動してきた。

「前の」世界では、たった四回ほどで捕まってしまったから。

今度は、出来るだけもっと長くいたい。

時空を移動するには、かなりの魔力を使ってしまうから…。

その為には、少しでも遺体の発見を遅らせなくては。

だから。

俺は少女の遺体を持って、海に向かった。

死体を海に沈めてしまうつもりだった。

そうすれば、簡単には見つかるまい。

俺は黒いビニール袋に重石をつけて、暗い海に投げ落とした。

少女の身体を入れたビニール袋は、あっという間に海に沈んでしまった。

…可哀想に。海の中は冷たいだろうな。寒いだろう。

…でも、こうするしかないんだ。

「…君を殺さないと、もっと多くの人が死んでしまうんだから」

だからこれは、仕方のないことなんだよ。