車から引き摺り降ろし、先程のように人目につかない路地裏に連れていき。

全く同じ手口で少女を殺し、その身体から滴る生き血を啜った。

それが終わると心臓を取り出して、それも綺麗に食べてしまってから。

ようやく、身体が落ち着いてきた。

「…はぁ…」

沸き立っていた頭の中が落ち着き、気持ちが楽になった。

冷静になった頭で、ふと少女の遺体が目に入る。

…あぁ、俺…。

…この子、壊しちゃったんだな。

「…」

なんて無惨な死体だろう。

生き血を全て啜られ、心臓を抉り出されて。

まだこんなに幼い子供なのに。

こんな風に…俺みたいな化け物に…命を奪われて。

割に合わないよなぁ。

この子の母親は、今頃用事を終えて車に戻っているだろうな。

車の中に残してきた娘の姿が見えないことに気づいて、きっと狼狽えているはずだ。

半狂乱になって、辺りを探し回っているんだろうな。

娘がこんな無惨な姿で路地裏に横たわっているなんて知ったら、何て言うだろう。

まず、俺を許しはしないだろうな。

俺はこの子の命を、人生を、未来を奪ったのだ。

この子の家族の、大事な宝物を壊してしまったのだ。

「…」

罪悪感はあった。

でも、謝りはしなかった。

俺に謝る資格なんてないと分かっているからだ。

それに。

俺が謝ったところで…この子の命が戻ってくる訳ではない…。

代わりに。

俺は少女の遺体を拾い上げた。

頭がクリアになった今なら…心に余裕の出来た今なら…。

せめてこの子を弔う為に、出来ることをしようと思った。