日が暮れてから、事に及ぶつもりだった。

だが…。

「はぁ…はぁ…」

息が荒い。

頭の中が沸き立ってる。

ほんの少しでも気を抜いたら、壊れてしまいそうなほどに。

胸を押さえながら歩く俺に、すれ違う人は怪訝そうな表情を向けてきた。

寂れた商店街の中を、あてもなく歩き続けて。

ただ、日が暮れるのを刻一刻と待ち続けていた。

商店街の一角、小さな骨董品店の店先で、商品を整理していた中年の男性が、俺を見てぎょっとした。

「お、おいおい。お兄ちゃん、顔真っ青だよ。大丈夫?」

「…」

俺は、「大丈夫です」と言おうと思った。

しかし、そんな余裕はなかった。

「ちょっと待ってな。救急車を呼び…」

「…黙れ」

「え?」

俺は自分の意思に反して、そう言ってしまっていた。

「黙れ!」

男性が伸ばした手を乱暴に振り払い。

呆然とする男性を置き去りに、俺は息を荒くして立ち去った。

もしこれ以上誰かが近くにいたら。

俺は、我慢が出来なくなっていたかもしれない。

しかし。

いずれにしても…俺は我慢することが出来なかった。

…丁度、近くの幼稚園の降園時間だったのだろう。

青いスモックを着て、黄色の鞄を首からかけて、一人で歩いているお下げ髪の女の子が、商店街の中を通りかかった。

幼稚園と自宅の距離が近いのか、それとも商店街の中を通れば安全だと思ったのか。

その子は、一人で歩いていた。

それを見た瞬間。

俺は、我慢が出来なくなった。