「連続幼女猟奇殺人事件?」

「はい」

シュニィちゃんから伝えられた、その言葉に。

羽久が、とんでもないことを言った。

「…めっちゃシルナが好きそうな事件」

ずっこけるかと思った。

しっ…けいな。

「こらっ、羽久。私はロリコンじゃないからね。勝手なこと言わない!」

「よく言うよ。教え子のキスシーン覗いてた奴が、」

「あーあーあー!シュニィちゃんの前で言わないで!」

「…?」

幸いなことに、シュニィちゃんは、何のこと?とばかりに首を傾げていた。

良かったバレなくて。シュニィちゃんとアトラス君の二人に本気で襲われたら、私も命の危機を感じるところだった。

さて、それはともかく。

「それで!シュニィちゃん、その事件の詳細は?幼女連続殺人事件って言うんだから、小さい女の子が殺されてるんだよね?」

「あ、はい。昨年、三人の小さい女の子の惨殺死体が見つかった事件は、覚えてますか?」

「うん、覚えてるよ」

あったよね。そんな酷い事件。

五歳未満の小さな女の子の死体が見つかった事件。

三人の女の子は、全員首筋に深い刺し傷があった。

それだけなら、確かに惨い事件ではあるけど、「惨殺」とまでは言えないだろう。

問題は、もう一つの傷だ。

「…心臓を抉り出されてたんだよね?」

「…そうです」

女の子達の死体には、心臓がなかった。

犯人は、女の子を殺した後、胸を切り裂いて、心臓だけを抉り出していったのだ。

そしてその心臓だけは、未だに発見されていない…。

何処かに隠してあるのか、捨ててしまったのか…。

死体から心臓を抉り出すという、あまりに猟奇的な殺害方法に、当時、ルーデュニア聖王国全体が騒然とした。

「…アトラス君が大変だったよね。あのとき」

「…本当に…親馬鹿で…。その節はお騒がせしました」

シュニィちゃんは、恥ずかしそうに頭を下げた。

アトラス君、あの頃はまだアイナちゃんがよちよち歩きしてた時期だったから、余計にあの事件が衝撃的だったらしく。

「絶対犯人を捕まえてやる&アイナにだけは手を出させない」と言って、アイナちゃんを荷物みたいにおんぶして、かつ剣を片手に、外に飛び出そうとしていたとか。

玄関先で、シュニィちゃんが必死に、アトラス君を羽交い締めにしていたところを、大勢の通行人が眺めていたそうな。

まぁまぁ、何事もなかったことだし。

「でも…あの三人の他には、犠牲者は出てなかったよね」

「はい」

連続殺人事件、ではあるんだけど。

四ヶ月くらいの間に、三人の女の子が立て続けに同じ手口で殺され。

国中が騒然とした事件だったが、三人目の女の子が亡くなってからは、それ以降ぱったりと途絶えた。

そして、それっきり女の子が殺される事件は起きていない。

これ以上犠牲者が出なかったことは、喜ばしいのだが…。

だからと言って、看過することは出来ない。