さて、改めて。

「は~…。やっぱりここが一番落ち着くな~」

「…」

またやるのか。そのくだり。

今度は、イレースに邪魔されることもない。

シルナは、ぐでーん、と机に突っ伏した。

こんな情けないところ、とても生徒には見せられないな。

まぁ、ここ数週間は大変だったから、仕方ないわな。

本当に…怒濤のように過ぎた日々だった。

「私が学院長室にいて、羽久がいて、生徒達がいて…。ここは良い場所だよ、羽久」

「…そうだな」

イーニシュフェルトの名の如く。

シルナにとって、第二の故郷になったのなら、それで良い。

何度も言うが、俺達はまだ、大きな問題を抱えている。

ベリクリーデや俺の中にいる神々もそうだし、他にも各地に、問題は山積みだ。

そんなことは分かってる。

分かってるけど、でもそれが何だって言うんだ。

そんなものは、今の平和を楽しんじゃいけない理由にはならない。

「…羽久」

「うん?」

「私達、きっとこれからもたくさん色んなことがあるよ。犯した過ちはたくさんあるし、これからもたくさんあるだろう」

だろうな。

「里の皆は、私を許さないだろう」

…だろうな。

でも。

「…きっとその苦しみの分、幸せなこともたくさん待ってるよ」

「…そうかな?」

「そうだろ?」

俺が、俺達が、シルナの傍にいる限り。

「一緒にいるよ。シルナ」

「…ありがとう、羽久」

この孤独な人間を、俺は決して一人にはしない。

この孤独な俺が、この世界で生きていく為に。