───────…気がついたときには、この場にいる一人を残す全員が膝をついていた。

そして、起きている一人は、必死に俺を揺さぶっていた。

「二十音…!二十音、大丈夫!?」

「…シルナ…」

薄目を開けると、そこには血相を変えたシルナがいた。

あれ…。俺は何をして…。

「二十音…じゃない。羽久…?」

「あ…?」

俺…また、入れ替わってたのか?

入れ替わってる間に何があったのか、全身がだるくて、指先一本動かすのも億劫だった。

それに。

「…!?」

シュニィや吐月達も、息を荒くして崩れ落ちていた。

かろうじて息はあるようだが、瀕死の状態だ。

「一体、何が…」

「良かった…。二十音、羽久も、ベリクリーデちゃんも皆…無事なんだね」

シルナは涙ながらにそう言って、心から安堵した表情を見せた。

…皆無事…って。

「ベリクリーデは…?」

ベリクリーデは、意識を失って倒れていた。

聖なる神の魔力は感じないが…。一体何処に消えたんだ。

「彼女の中に封じ込めた…。君の中に、禍なる神を封じたのと同じように」

シルナが、そう説明した。

「皆から限界まで、魔力をもらったんだ。羽久…いや、二十音、君からも…」

「…そういうことか」

ここにいるのは、ルーデュニア聖王国でも、桁違いの魔力を持つ魔導師達だ。

彼らの魔力を使えば、神殺しの魔法も不可能ではない…はずだが。

「…前の俺が…二十音が出てこなかったら、どうするつもりだったんだ」

「…」

咄嗟に、俺が入れ替わったから良かったようなものの。

俺達の人格は、それぞれ持っている魔力の量も大きく違っている。

二十音だけが、並外れた魔力を持っている。

その二十音が、シルナに魔力を大量に分けたのだろう。

だから、全員生き残れた。

でも、もし俺が入れ替わらなかったら。

「…」

シルナは、何も答えなかった。

…そうか、そうだよな。

死ぬつもりだったんだな。自分が。

自分が死ぬことで、魔法を完成させようとしたんだな。

「…この、大馬鹿野郎」

お互いふらふらだから、殴るのは勘弁してやろう。

でも。

「…次、また自分を犠牲にしようとしたら…死んでも許さないからな」

「…羽久…」

「あの世でも、絶対口利いてやらない。お前なんて大ッ嫌いだって言ってやる」

「それはやめてくださいお願いします」

それだけは嫌だったらしい。

「…なら、もうやめろよ」

「…うん」

「天国でも、地獄でも、何処にでもついていってやるから…。自分だけ犠牲になろうとするのは、やめてくれ」

「…うん」

「一人だけで…生きてる訳じゃないんだから…」

お前が死んだら悲しむ人が、一杯いるんだよ。

頼むから、そのことを思い出してくれ。