──────…学院長に、そんな秘密があったとは。

責める気はなかった。

私だって、自分の目的の為に、酷いことをたくさんしてきた。

そんな私が、どうしてこの人を責められるだろう。

私が世界を変える為に、『禁忌の黒魔導書』と手を組んだように。

この人は、愛する人の為に守るべき物を裏切ったのだ。

私なんかより、ずっとずっと悩んで、悩み抜いて、生きてきた…。

それなのにどうして、私がこの人を責められるだろう。

例え騙されていたのだとしても。

利用されていただけなのだとしても。

私が幸せになれる道を、照らしてくれたのはあなただから。

その選択で、あなたが幸せになれるのなら。

ずっと苦しみ続けていたであろうあなたが、幸せになれるのなら。

「どうか、あなたの望む道を行ってください。あなた自身の幸せの為に。あなたが、私に教えてくれたように」

それが、私に出来るこの人への、最大の恩返しだ。