──────…学院長に、そんな過去があったなんて。

いや…私も、朧気ながら分かっていたのだ。

学院長に、後ろ暗い何かがあることを。

時折私達に見せる、後ろめたそうな顔が。

あれが、シルナ・エインリーという人間の素顔なのだ。

彼の言うことが本当なら、私は単なる戦力の一人として、イーニシュフェルト魔導学院に連れてこられたことになる。

でも、私をアルデン人だからと言って、差別したりはしなかった。

そして何より、彼が私をイーニシュフェルトに連れてきてくれたからこそ、私はアトラスさんに出会えた。

アイナが生まれたのも、そのお陰。

私に大事な家族を与えてくれた恩人を、どうして憎めようか。

「…真実がどうあれ、私はあなたに感謝しかありませんよ、学院長先生」

きっとアトラスさんも、同じ思いだろう。