罪悪感がない訳ではない。

己の使命を忘れてしまった訳でもない。

ただ、二十音に対する愛が、それらを上回っているというだけで。

私はイーニシュフェルトの里の賢者として生まれ、里の者達の期待を一身に受けて、未来を託された。

それなのに、私は自分の感情だけを優先して、死者の思いを踏みにじった。

そしてあろうことか、倒すべき邪神を守るという選択をした。

聖なる神を討ち滅ぼしてでも、邪神を守るという愚かな選択を。

里の者達は、私を許しはしないだろう。

草葉の陰から、私を憎んでいるだろう。

自分が許されない過ちを犯してしまったことは、私にも分かっている。

でも、何度同じ選択を迫られたとしても。

私は、二十音を殺せない。

二十音を守る為なら、何でもする。

私は、皆が思うような理想的な教育者ではない。

全ては、二十音を守る為。

二十音を聖なる神から守る手駒にする為に、善人の顔をして、味方を増やしていただけ。

二十音以外の人間がどうなろうと、本当はどうでも良いのだ。

これが、私の本性だ。

ずっとしたたかに隠し続けてきた、本当の私の姿。

私の本性を知れば、誰もが私と二十音の敵に回るだろう。

騙されていたことを憎み、裏切られたと思うだろう。

「…許せないだろうね、君達は」

今までずっと、聖人面しながら、生徒思いの優しい教師の振りをしながら、君達を利用しようとしていた私を。

「…でも私は、二十音を守る為なら君達でも容赦はしないよ」

世界を敵に回しても、私はこの子を選んだのだ。

例え教え子相手でも、二十音を守る為なら…手をかけることも躊躇いはしない。