私は二十音の中に邪神を封じる為に、光と対を為す闇の『聖宝具』を、二十音の身体に埋め込んだ。

これで、邪神の魔力を抑えることが出来るだろう。

『聖宝具』は、イーニシュフェルトの里に受け継がれる、伝説の杖である。

いざというときの為に、ずっと持ち歩いてきた。

この杖があれば、邪神を殺すことこそ出来ないものの、強力な切り札にはなり得る。

邪神の邪悪な魔力を抑え、二十音の中に封じることが出来る。

勿論、二十音の中に邪神が眠っていることに変わりはない。

この日から、私のやるべきことは変わった。

神殺しの魔法の研究自体は、これからも続けなければならない。

ただし、それは邪神を殺す為ではない。

いつか復活して、二十音の命を奪おうとするであろう、聖なる神を殺す為の魔法だ。

私はもう、邪神を殺さない。

二十音の中に邪神がいる限り、私は二十音を殺すことは出来ない。

ならば、二十音と私の敵は、聖なる神。

その方法は簡単だ。

かつて禍なる神を封印した、イーニシュフェルトの禁呪。

あれと同じことをすれば良い。

だから私は、イーニシュフェルト魔導学院に戦力を集めた。

いざとなったら、彼らの魔力を使って、聖なる神を封じ込める。

彼らを利用する。

全ては、二十音を守る為。

私が二十音の傍にいる為。

二十音が私の傍にいる為。

その為なら私は、何でもする。

例えそれが、許されざる裏切りなのだとしても。