出来ない。そんなこと、私には出来ない。

出来るはずがないじゃないか。

私はずっと一人ぼっちだった。ずっと孤独だった。

その孤独を、この子の愛が埋めてくれた。

二十音を殺したら、私はまた一人になるのだ。

嫌だよ、そんなの。

もう一人になるのは嫌だ。

「…そうだね、二十音」

私は杖を捨てて、二十音を抱き締めた。

強く、強く抱き締めた。

この子を殺すなんて、私には出来ない。

絶対に出来ない。

「私を一人にしないでおくれ。私も、君を一人にしないから…」

一緒に、私と一緒に生きてくれ。

私の孤独を、君の孤独を、お互いに埋め合おう。

死者の呪いなど、己の使命など知ったことか。

正しいことが何なのかは分かってる。

何をすべきなのかも分かってる。

でも、感情がそれを許さない。

愛が、私の使命の邪魔をする。

私には、殺せない。

「しーちゃん…」

「二十音…。ごめんね、大好きだよ」

「…うん」

二十音も、と言った。