だけど。

私は二十音を育てていくうちに、自分の中になかった感情を覚えていった。

全ての憎しみや、全ての死者の怨念を無に返す感情。

そう、それが愛だった。

私は、依り代として殺さなければならないはずの二十音を、愛してしまった。

私は孤独だった。

二十音に会うまで、気づきもしなかった。

イーニシュフェルトの里が滅んでからというもの、私は何千年も、一人で生きてきた。

自分が孤独であると気づかないほどに、孤独だった。

二十音と会って、共に過ごすうちに、私は己の孤独が満たされているのを感じた。

あぁ、私は孤独だったんだ。

ずっと寂しかったんだ。

一人ぼっちで、邪神を倒す方法だけを考え、死者の願い…いや、呪いとも言える遺言を守る為に生きてきた。

自分が孤独だと気づかないほどに、ただひたすら、死者の無念を晴らす為に…。

孤独だった私の心を、二十音が埋めてくれた。

二十音は、私のような人間を。

家族を、故郷の人々を犠牲にして、一人だけ生き残ったような人間を。

私を、初めて愛してくれた人だった。

そして、二十音にとっても。

感情移入なんて、してはいけなかったのに。

利用するだけ利用して、殺してしまわなければならないのに。

ましてや、愛するなんてとんでもない。

私は何処までも冷徹で、ただ死者の無念を晴らし、邪神を討ち滅ぼすだけの存在であらなければならないのに。

その為に、何でも利用しなければならないのに…。

私は二十音を依り代にするかどうか、迷った。

他の方法がないか、必死に考えた。

でも、どんなに考えても、その方法しか思い付かなかった。

死者の呪いと、私の愛と。

どちらを選ぶかなど、考えるまでもなかった。