…かつて、まだルーデュニア聖王国という国が存在していなかった頃。

そこには、イーニシュフェルトの里という場所があった。

里に住む住民は全て魔導師だったが、あの当時彼らは魔導師ではなく、賢者と呼ばれていた。

魔導理論の研究をしながら、里の賢者達は平和に暮らしていた。

里の外、魔導師でない一般人達とも、仲良く共存していた。

何の争いもない、平和な世界。

しかし、その平和と均衡は、いきなり崩れた。

二人の神が地上に降臨し、互いに争い始めたからである。

聖なる神と、禍なる神の聖戦。

その勝者は、禍なる神であった。

聖なる神は、人々を守る為に散った。

そして残されたのは、混沌に満ちた世界だ。

邪神の支配する世界を救う為、立ち上がったのはイーニシュフェルトの里の賢者達だった。

彼らは邪神を封印する方法として、禁じられた魔法…禁呪を使うことを選んだ。

それは、生け贄として何人もの魔導師の魔力を、術者である一人の魔導師に捧げ、その魔力を以て、邪神を封印するというものだった。

イーニシュフェルトの賢者達は、世界を救うには、最早この方法しかないと判断した。

彼らは自らの命を犠牲にして、邪神を封じることを選んだのだ。

そして、里の賢者達の魔力を集め、邪神を封じる術者として選ばれたのが。

まだ若く、魔導師として並々ならぬ才能を持っていた、シルナ・エインリーという賢者だった。

賢者達はシルナ・エインリーに全ての魔力を捧げ、彼に世界を託して命を落とした。

彼らは、シルナ・エインリーに遺言を残した。

「いつか、また邪神が復活するときがあれば、そのときはお前が、邪神を打ち倒してくれ」と。

「必ず邪神を倒し、世界を正しい方に導くと誓ってくれ」と。

シルナ・エインリーは、自分一人を残して死んでいく仲間達に、涙ながらに誓いを立てた。

いつか必ず、邪神をこの手で殺してみせる、と。