──────…毎度お馴染み。

この、超感動的な場面を。

「うぅ…ぐずっ…。ずびっ…」

「…」

「シュニィぢゃん…!よがっだねぇ。よがっだねぇ…!」

「…もしもし警察ですか。覗きの常習犯がいるので捕まえに来てください」

「ちょっと羽久!今、今良いところなんだからさ!」

「だから何だよ。良いところを勝手に覗くな!雰囲気台無しなんだよ!」

失礼過ぎるにもほどがある。

人様の告白シーンを覗き見るなんてさ。

あの二人に申し訳ないとは思わないのか。

「だって…!試験終わったのに、シュニィちゃんが訓練場に向かってるから…。これは何かあるなと思って」

「…うわぁ…。最低…」

「そんな下衆を見る目をしないで。私は純粋な気持ちで。保護者として!二人の恋の行方を見守ってるだけだよ!」

覗きが自分を正当化してるんだけど。

めちゃくちゃ見苦しいんだけど。

余計なお世話だろ。あの二人は別に、自分達の恋の行方を見守って欲しいなんて思っちゃいないよ。

「あの二人はきっと、良いカップルになるよ。美男美女だし、二人共強いからねぇ」

まぁ…間違いなくあの二人は、イーニシュフェルトの全生徒を殲滅出来るくらいの実力はあるけど。

それどころか、このまま成長すれば、俺やシルナとも良い勝負が出来るようになるだろう。

天才二人のカップルであることには違いない。

「将来的には、聖魔騎士団を背負って立つ二人になるかもしれないね。ふふ、そのときが楽しみだよ」

「…ったく、下世話な奴だよ」

まぁ…もしそうなったとしたら、俺としては嬉しい。

あの二人は…このルーデュニア聖王国と、聖魔騎士団を背負って立つ逸材になるだろう。

だから、あの二人の恋の行方とやらを、見守りたい気持ちは分かるけど…。

俺は、シルナの襟首をガシッ、と掴んだ。

「あっ、ちょっ、羽久!」

「うるせぇ。それとこれとは話が別だ。覗きが正当化される理由にはならないんだよ」

「だって、この後二人がちゅーするところが見られるかも、」

「この変態覗き魔!通報されてしまえ!学校パンフの学院長紹介欄に、『私は生徒のキスシーンを覗き見る変態です』って書くぞ!」

「やめて!来年の入学生が!来年の入学生が減ってしまう!」

俺はシルナの襟首を掴んで、ずりずりと引き摺った。

シルナが何やら喚いていたが、聞こえないことにした。